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第2回 民事訴訟制度とADR
1.民事訴訟制度の果たす意義と役割
「所有権絶対」「契約自由(私的自治)」「過失責任」「権利能力平等」といった近代私法の大原則と自力救済禁止の下で、法律紛争の終局的解決のための司法制度、中でもその中核をなす裁判制度(特に民事訴訟制度)が、国民の権利擁護を目的とした国家権力作用として重要かつ不可欠な意義を有していることについては、誰しも異論のないところでしょう。
この点、現在急速に推進されている司法制度改革においても、法曹人口の増大を軸とした裁判機能の充実と迅速化について、最も重点的な取組みがなされているところでもあります。
2.法律が有する紛争予防と解決のための調整機能
紙面の都合もあり、敢えて誤解を恐れずに民事訴訟制度の特性について簡潔にまとめるとすれば、
(1)当事者が判決に拘束される根拠が国家権力(司法権)にあるが故に、(2)当事者は紛争解決機関である裁判所の裁判官を選ぶことができず、(3)私的裁判禁止原則からもその手続は民事訴訟法を始めとする手続法・裁判所規則等の厳格な適用を受け、(4)憲法に基づき公開審理が原則とされ、(5)裁判所の判断=判決は常に法規を大前提とし、裁判所の認定した具体的事実を小前提として、その法規の定める法律効果の存否を結論として導くこと等があげられるでしょう。こうした特性そのものは、国家による裁判制度に対する国民の信頼を維持するためにも重要なことでしょう。
他方、規制緩和による事前規制型社会から事後調整型社会への転換による日本の社会経済の改革・活性化が進められる中で、法律紛争とその解決のニーズが増加するであろうことは明らかですので、現状でも多数の案件を抱える裁判所での事件処理の迅速化が今後図られるとしても、それと並行して、裁判外の公平・迅速な紛争処理システムの整備が急務とされていることも明らかでしょう。(司法外)ADRの早期整備・拡充・活性化が求められる背景もそこにあります。
3.(司法外)ADRの特性について
ADRには大きく分けて、調停・和解あっせん・仲裁の三種類があげられますが、民事訴訟制度と比較した場合のその特性としては、
(1)当事者がその結果に拘束される根拠が(仲裁契約を含めて)当事者間の自主的な合意にあるが故に、(2)当事者がADR機関の調停員・あっせん人・仲裁人等を選定することができ、(3)手続についても当事者間の合意に基づき弾力的な運用が可能となり、(4)原則的に非公開の場で手続が進められ、(5)法規の適用に基づく解決が原則としてなされるものの、単に法律上の権利義務の存否にとどまらない実情に沿った解決を図る等の柔軟な対応・紛争解決が可能であること等があげられるでしょう。
4.(司法外)ADRの充実の必要性
社会に発生する紛争は実に多種多様であり、その全てが現行の司法制度に基づく(裁判・調停等の)手続による解決を必ずしも必要とするものであるとはいえないのではないでしょうか。事案の性格や当事者の事情等に応じて多様な紛争解決方法が整備され活用されることは、紛争の不要な深刻化を防ぐうえでも非常に重要な意味を持ちます。
また紛争当事者の自主性を生かした主体的な紛争解決がADR機関において行われることにより、なによりも当事者自身が、自らのかかえる紛争を法律的な観点から整理していくという意識付けも可能となり、結果的に国民が法律をより身近なものとしてとらえることができるようになるものと思われます。
法律紛争をかかえることとなった当事者が最も望んでいることは、「私のこの法律紛争を、公平に、迅速に、かつできるだけ少ない費用で解決してほしい。」この一言に尽きるのではないでしょうか。その意味でも、国民にとって紛争解決のための魅力的な選択肢となるべき(司法外=民間)ADR機関の整備・拡充が求められているものと考えます。
5.多様なADR機関の整備・活性化を
ADRのもう一つの特徴としてその専門性をあげることができます。社会経済発展と多様化の結果、日常生活に生起する法律紛争についても多様化と同時に専門領域に係るものが増加する傾向にあります。身近な消費生活に関するものはもとより、金融・建築・不動産・医療・労働・PL・知的財産等、高度な専門知識を有していなければ、公正かつ適切な紛争処理のための判断が困難である場合もあります。その意味で、国民にとって身近な問題について総合的に対応できるADR機関の整備と併せて、専門分野に係るADR機関の整備が求められるところでしょう。
法律実務の一端を担う専門職の一人として、公正中立・簡便・迅速・低廉な、国民が容易にアクセスでき、真にその要請に応えられる紛争解決機関として、多様なADR機関の早期な整備・確立を願うものです。
(次回は、司法制度改革推進本部ADR検討会での論議が集約されつつあるADR基本法にも触れてみたいと思います。)